Navigation to the Extreme

月曜日, 12月 25, 2006

走力のある選手と日本のオリエンテーリング

善徳のブログばかりから引用している感じがあるが、とても参考になるので。


簡単なコース(たとえば新人コース、リレーのコース)であればその人のスピードも生かせることが出来るかもしれない。しかしクラスの難易度が上がるにつれ、スピードはミスやロスを誘発する危険因子になってしまう。本来ならばそれはものすごい武器になるはずなのだが、切れ味の鋭い分あだになってしまうのかもしれない。そうなると結局走る→つぼる→結果でない→面白くない→OLから離れる。という図式が成り立つのは簡単な話だと思う。テラインの特性もあるだろうが、クラスが上がるにつれて自分の武器を活かしづらいコース設定になってしまう。(つまりは難しくなる)

結局飛びぬけて足の早い選手は大学時代の4年間で(山口大助さんのような)飛びぬけた成果でも出さない限り、その能力を思う存分発揮できぬままにオリエンテーリングから離れてしまう。


前回の記入でこのことについて言及しようと思いながら時間がなかったので次回にしようと思っていたら先を越されてしまった。まさにそのとおり。

脚の速さでもそうだが、日本のオリエンテーリング界はそれなりに脚の速い学生選手は大勢いた。誰かに歴代学生オリエンティア走力みたいなのをまとめてもらうと検証できると思うが、よく引き合いに出される5000タイムでも16分を切る選手(切ったベストを持っている選手)は掃いて捨てるほどいる。僕が個人的に知っているだけでも20人ぐらいは名前を挙げられるのでは?15分前後の選手もそれなりにいるのではなかろうか?

こういった選手のパターンとして善徳の指摘のとおりフラストレーションのたまる学生競技生活を送ることも多かったと思う。自身のオリエンテーリングの難しさ、スピードコントロールのフラストレーションだけでない。この手の陸上系の選手らにとり、(少なくとも初期においては)努力と結果が見合わないスポーツにやる気を持続させるのも困難なのかもとも思ってしまう。自分よりも身体的な能力もなさそうで、且つトレーニングもたいしてしていない奴に学生時代負け続ける。。。オリエンテーリングにおいてはこんなことがよくあると思う。4年間の努力と身体的な能力が、ちょっとした天性の地図読みナビゲーション能力に勝てない。もしくは中学からやってきた奴に勝てない。そんなことが現実にある。

金曜日, 12月 22, 2006

脚の続き

善徳のスプリントのコメント見ても思うが、やはり、脚の速さが問題ではないように思える。最後に善徳は

そうは言っても、海外でのレースになると話は別です。日本で卓越した技術を持っているといっても、海外のレースではみんなが同じその技術を持っているわけです。技術に差がないならば、体力で差が生まれる。単純な話です。だからこそ日本のトップの選手は体力トレーニングに励み、スピードアップを課題にするわけです。


と締めくくってはいるが、逆に言えば彼より脚が速い日本の選手は大勢いることを考えると、脚の速さが問題じゃないように思える。これはもしかして、村越さんが日本のオリエンテーリング界のトップだった頃と同じ話?
世界の差を脚の速さの違いに求めるより、なんで脚の速くて善徳(or村越)並みの技術を持った選手が出てこないの、に焦点を当ててもいいんじゃないかな。

水曜日, 12月 06, 2006

日本のオリエンティアは脚が遅すぎるか?スイスの例

今日Tさんと織田フィールドでオリエンティアの走力について話をした。Tさんはだいぶ前からオリエンティアは遅すぎる、もっと速く走れないといけない、陸上選手をオリエンテーリングやらせたほうが良い、5000のタイムが遅すぎる等と良く言っている。
確かに脚が速い事にはこしたことがないのだが、日本のオリエンティアが世界のステージで本格的に戦えないのは別に走力のせいじゃないと僕は思う。少なくとも、陸上選手にオリエンテーリングをやらせて解決することではない。別の意味−脚の速さうんぬんでなく-陸上選手を入れるのは良いかもしれないが。少なくとも、効率的でないし、今やる事ではない。

いろいろ理由はるのだが、以前番場選手がメーリングリストで流した情報を掲示:
1. Hubmann Daniel 83 14:56,81
2. Schneider David 81 14:59,36
3. Hertner Fabian 85 15:20,77
4. Lauenstein Marc 80 15:23,49
5. Muller Urs 76 15:28,08
6. Ott Christian 80 15:45,80
7. Rechsteiner Sandro 85 15:47,66
8. Ruedinger Andreas 85 15:47,67
9. Muller Andreas 80 15:48,75
10. Koch Dominik 81 15:59,62
11. Hodel Thomas 72 16:06,68
12. Rollier Baptiste 82 16:18,08

スイスのトップ選手の5000のタイムである。これを見ると世界のトップレベル(世界選手権優勝を目指す、入賞にからむ)でも、5000のタイムは15分前半から16分だということが分かる。15分を切っている二人は確か世界のトップシーンでも脚が速いと言われていたと思う(うろ覚え)。

ちなみに日本のトップ選手、山口、松澤、紺野あたりは確か15分後半ぐらいのタイムをキャリアのどっかの時点では出している。鹿島田選手も15分後半で走っている。

単純比較は出来ないが、トラックでの5000のタイムという観点で言えば、少なくともスイスの選手に比べたら日本の選手が極端に遅い、ということはないように思える。たとえ、様々な条件を差し引いても、山口選手が愛知の世界選手権でリレーのパックで一緒に走れている事、その前のスウェーデンでもオーストラリアのトップ選手と一緒に走れている事を見ても、日本は速いとはいえないものの(並も苦しい?)、極端に遅い−少なくともオリエンテーリングでの結果を説明するほど−脚が遅くはないことは明確である。
もちろん、これは不整地での走りやより長い距離だとか、条件が変われば、違うのかもしれない。また、脚が速いにこした事はないのは明らか。でも、最も優先順位の高い−少なくとも日本代表の強化戦略という意味で言えば−要素ではないように思える。

月曜日, 12月 04, 2006

デンマークの教訓

Navigation to the Extreme: デンマークでのオリエンテーリング

おとといの追加で、じゃあ日本への適用はと考える。
Mさんの話は以下のようにまとめられると思う:
・タレントは突然変異だった>何か特別な施策があったわけではなさそう
・一人の世界的な成功は他のメンバーを大きく刺激し、レベルアップにつながった
・オリエンテーリングへの非常に大きなコミットメントが、比較的同じレベルだったランナーたちの間に大きな差を作った。

この話はデンマークだけではなく、様々なオリエンテーリング中堅国で共通していると思われる。ようするにかつてないタレントを持った選手が突然現れ成功し、且つ北欧に住むなどして力を伸ばし、他の選手を大きく刺激した。エリートシーンの傍観者としての意見だが、今は日本より遥か上にいるオーストラリア、フランス、イギリスでもそのようなことではなかろうか。

>突然変異のタレントのある選手が子供の頃から親に連れられてオリエンテーリングをしていたという話を聞くと、今の二世の子供達をオリエンテーリングを楽しませ、且つ継続的に続ける環境を作ることが、おそらく日本のオリエンテーリング界の少なくとも強化という面では重要かがわかる。どうだろう、世界のトップ選手で、中学レベルでオリエンテーリングをしていなかった人はいるのだろうか?

>一人の成功は他を大きく刺激したことを考えると、比較的多くの強化選手に薄くリソースを分けるより、一人のタレント(見極める困難さはあるが)にコミットして、成功させるのが重要に思える。

>また、世界的な成功のためにはデンマークの選手たちが活躍はじめた10年ほど前より、トップのエリート化が進んでいることを考えても、より多くのコミットメントが必要なことが伺える。

そんなことを書いていると、じゃあ、今の日本のトップ選手は全く無意味なのか(日本の世界への活躍のために)、といわれるかもしれない。それについては、「彼ら個人の結果は無意味である」と言わざるを得ない。少なくとも、今のレベルの選手が、世界のトップ選手と同じレベルのコミットメントをしないまま、国内からの活動で世界で表彰台に上ることをイメージできるか?正直に肯定できる人はいないだろう。組織として結果を期待することが無意味なだけである。それは同時に、結果を求めて強化にお金を出すことも無意味-特に今のJOAの経済状況を考えれば-といわざるをえない。

とはいえ、個人個人が自らのオリエンテーリングをレベルアップすることは当然肯定できることであるし、可能性は(ある意味)無限といえよう。また、長期的な強化の観点では非常に重要であろう。仮に突然変異のタレントある子供が出てきたら、まずはじめには活躍する国内のエリートシーンが必要であるし、倒すべき国内の旧世代のチャンピオン-強ければ強いほうがよいのだろうが-が必要だ。そして、彼もしくは彼女が仮にオリエンテーリング界の期待をしょってコミットメントを深めようと思ったとき、北欧での生活を考えるなりしたときに、先に道をつくっている人が-どういうレベルであろうと-いれば、その道はないよりかは楽になるはずなのだから。

土曜日, 12月 02, 2006

デンマークでのオリエンテーリング

渋谷で走る会に新たにデンマーク人が新たに加わった。昔デンマークのナショナルチーム(ジュニア)にいたそうだ。ちょうど彼、Mさん、はアランモルゲンソン、カルステンヨルゲンソン、クリステルケルソンといったトップエリートと同じ年代で、彼らとは今でも連絡を取り合う仲らしい。
デンマークは世界選手権のリレーで優勝したこともある強豪である。しかし、常に強かったわけではない。Mさん曰く、彼の世代-アラン、カルステン、クリス-が突然変異かのように、強くなったらしい。

今でも競技人口約5000人、北欧の一部とはいえども、当時オリエンテーリングは日本同様に『競技スポーツ』とはあまり考えられていなく、森の中の散策というイメージがあったらしい。その中で、たまたま非常に才能のあった同世代の若者が現れた。親がオリエンテーリングをやっていて、その影響で幼い頃からオリエンテーリングに馴染んでいた。今回渋谷に入ったMさんや他の選手は切磋琢磨し、競い合い、どんどん早くなっていった。とは、いえ、まだ世界との差は大きかった。
そこで、大学に入り、Mさんと世界のトップになった選手たちとの分岐点が訪れた。Mさんは勉学の道へ進みつつオリエンテーリングを励み、他の選手はオリエンテーリングへのコミットメントを強めた。差は歴然であったとMさんは振り返る。アランは世界レベルの大会でも結果が出るようになり、他の選手はそれに触発されるようにレベルアップしていった。

アランによる世界選手権での活躍で、デンマークにおけるオリエンテーリングの地位も変わった。オリエンテーリングをスポーツとして認識する人たちがぐっと増えた。また、世界での結果が出たことを理由に公的な資金も付いた。世間の認識の変化、トップ選手、そして資金が入ってくる。これらが良い方向につながり、今のデンマークの強さにつながっている。

もちろん、競技人口のベースからして、デンマークが世界のトップレベルを維持できるのは難しく、今のレベルにいられるのはほんの一握りの同世代の突出した選手らのおかげなのかもしれない、とMさんは言う。しかし、そうとはいえ、デンマークにはまだまだ若い優秀な選手がいて、当面日本がデンマークに勝つということはなさそうだ。